木剣を強く握り直すと手のひらからじわりと痛みが広がり、巌勝は幾分か鬱陶しげに眉をひそめた。手のひらを広げると血豆が潰れていたが、いつものことであるため特別思うところもなく改めて木剣を構える。
そのまま素振りを続けようとしたところで、つい先日、自分の手のひらを見て不安げに……今にも泣き出しそうな、情けない顔を見せた少女が頭に浮かんだ。雑念とは情けない。と、自身を咎めつつも、決して不快な思いはなかった。
血が滲む、豆だらけの手から伴う痛みを想像してか表情を歪めていた千夜だったが、痛みがないと知るやいなや安堵して笑っていた。巌勝にはそれが少し不思議であると同時に、自身へ向けられる千夜の心遣いが気持ちよくもあった。
――巌勝さまの手はとてもお綺麗ですね。
――私の手が? 千夜はおかしなことを言うのだな。
くすりと笑って、少女は言った。努力が現れている素敵な手だ、と。
努力。そうだ、自分は努力しなければ奴に届く可能性すらないのだ。どれほどの努力を重ねれば届くことができるのか、皆目検討もつかないが。
あの少女には、巌勝の抱く腹の底が煮えくり返るような嫉妬や憎悪といった渦巻く負は理解されないだろう。しかし巌勝にとっては、それでよいのだと思えた。ただ、あの無垢な少女を無垢なまま傍らに置くことだけは許されたし。
